愛は人々を合一へと誘う。そして万人にとって唯一普遍の理性がそれを批准する。
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳
トルストイは愛というものを個人の感情という意味だけではなく、人間全般に備わっている属性として考えているフシがあります。
個人の感情としての愛ももちろん認めていますが、愛欲や自己愛として宗教的博愛とは明確に区別して使っていますね。
ここで使われている愛は、もちろん宗教的な博愛、特にキリスト教敵には隣人愛のことですね。
理性が人間全般に備わっている属性としての愛を批准する、という表現については、理性は霊的なものによって立脚しているという考えがあると思います。
現代の科学から見ると、理性はもちろん100%動物的な能力ですが、当時、または伝統的なキリスト教の観点ではよく精神=理性=神の一部=霊というような繋がりと考えていることが見て取れます。
一方で、この箴言の理性が人類の合一を認めるということにも納得できる面があります。
社会性の動物は互助関係を巧みに発展させて繁栄してきた歴史があります。
本能的に合一を目指す気持ち、つまり互助的な関係を求める感情を認めることは十分考えられそうと思います。
理性は感情を裏付けする能力であることが分かっていますから、辻褄は合いそうだなと考えているわけです。
宗教的な空論と思われるようなことが科学的な裏付けができそうになってきているのがおもしろいと思います。
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