もしも死が、われわれが眠ってすっかり生命の意識を失うときのような、あんな状態であれば、われわれはみんな、その状態のなかには別に何も恐ろしいものはないことを知っている、とソクラテスは言った。またもし死が、大勢の人々が考えるように、よりよき生への移行であるならば、死は悪ではなくて善であるであろう。
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳
輪廻転生はキリスト教では馴染みがないですから、目新しさから紹介したのかもしれません。
現代的(自然科学的)に死を考えると(実際にはソクラテスの時代にはそう考えたようですが)、本人からしたら死後に不利益は無いですから、恐ろしいものはないというのは分かります。
私が死んで困るのは生きている状態の私ですから。
死は少なくとも悪くはないよ、もしかしたら転生してもっといいことになるよ、とは気休め以上のことには捉えられませんが、死を恐れて生きることが疎かになることはよくないよ、ということがこの文で言いたいことでしょうね。
生を充実させていこうという自己啓発的な内容のようです。
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