『文読む月日』-1月19日

文学

個人生活にしても、社会全般の生活にしても、掟はただ一つ、その生活を改善したいと思ったらそれを放棄する覚悟をしなければならない。

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

トルストイ晩年の小説『復活』では、信仰に目覚めた主人公の公爵が自分の領地を手放したりお金を恵んだりして貴族生活を投げ捨てるようになります。
公爵って帝政ロシア時代では貴族の中で一番偉いみたいですからね。相当な地位と財力がありましたが、その分信仰の実践とは程遠い位置にある立場として考えられたのだと思います。

自身も皇帝に仕えていた伯爵家の生まれですから似たような気持ちだったのかもしれません。
最期には貴族の自分を捨てて家出して亡くなってしまいます。

自身が地主貴族だったから作家をのびのびとできたのだと思いますし、洞察の深い信仰を練り上げられたのだと思いますから皮肉というか、相反する要素を孕んでいる思想家作家だと思います。

生活を改善するためには生活を放棄する必要があるとは、改善の余地がある生活には欲や欺瞞が含まれているからその部分を捨てよう、と捉えるのがよいと思います。
トルストイの信仰に立てば、少なくとも自害や自暴自棄を勧める内容ではないでしょう。

仏教的な執着を捨てることや、老子的な無為自然な生活をイメージさせられます。

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