『文読む月日』-1月30日

文学

もしも土地に対する権利を持たない人人間が一人でもいるならば、私や、あなたや、それにまた、すべての人々の土地に対する権利も、合法的でないことになる。(エスマン)

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

土地の所有権が公平でない場合、その所有権の正当性全体が問われるという考え方のようです。

特に特権階級の土地所有に問題意識を持っていたトルストイですから、エスマンのこの箴言との親和性は高くなっています。
トルストイの小説の中でも、メインの登場人物がジョン・ロックの論文を読んで土地の所有権について感化される場面が描かれていました。
エスマンの考えはジョン・ロックの考えに同調したものが多いと思います。

このような土地に関する所有権の問題意識は、すべての人が平等であるという権利意識に基づきます。
土地が少ないために飢えたり窮乏することは土地で富裕になった人が不当に土地を持ちすぎているという考えになるわけですね。

特にロックの考えでは、労働することが土地を所有する正当な理由という考えですから、自分で耕さない貴族や足元を見て貸すだけの地主などは不正というわけです。
特に土地は人間(物質的に)にとって基本だし、有限です。
それを耕さないで収穫物や利益だけとっていくとは何事か、というのが人間の心情として当然だと思いますし、それを理屈づけて説得力をつけていることがすごいんだと思います。
短くすると、働かざるもの食うべからず。

そんな思想の中で、連帯性を強調して平等であるべきと訴えたのがこの言葉だと言えるでしょう。

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