『文読む月日』-7月6日

文学
戦争の害悪についてかれこれ論ずるときは過ぎた。そのことはすでに論じつくされている。今や残るはただ一つ、一人ひとりがまず何から始めるべきか、ということである。つまり一人ひとりがなすべきでないと思うことをなさないこと、ただそれ一つである。
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

クリミア戦争に従軍した経験を『五月のセヴァーストポリ』に代表されるセヴァーストポリシリーズで戦争のむごさと戦場から離れた国民の呑気さをありありと描写してから、ずっと反戦の意思を表明してきたトルストイですが、彼が生きた国で今も戦争が起きているというのは皮肉な感じがします。
しかし、実際に従軍したからこそリアルで説得力のある反戦の思想を形づくることができたという面もあるかもしれません。

この箴言で言っていることは他の日の箴言でも言及していることで、具体的には兵隊一人一人が迷妄を信じず、自分の良心に従うことだけで戦争はできなくなるということです。
戦争に繋がる迷妄として、愛国心や栄誉欲などはナショナリズムの時代にあって顕著でしたが、今でも選民思想や土地の占有利益という自己愛は根強く残っているように思えます。

実際には、事ここに及んでは身を守らねばという形で戦わなければ命に係わるということはあるでしょうが、国が戦争に向かうまでには手続きが多くあるはずです。
戦争に参加する、というのは現代日本ではもう想像もつかないほどですが、選挙一つ、世論一つにも注意して偏った自己愛に迎合しないよう注意していかなくてはいけませんね。

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