『文読む月日』-7月5日

文学
悪をなしうるのは当人自身だけである。人間の意思にかかわりなく生ずることは、すべて善である。
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

トルストイのオリジナルの思想に感じますが、ストア派の影響が大きいように感じます。
ストア派では、道徳的な物事を善と悪とどちらでもないものに区別していました。
ここで違うのは、どちらでもないものも善と捉えているところですね。
自然が行ったことは人間にとっては善い事、その人のために用意された運命的なもの、というのはストア派哲学的(マルクスアウレリウス的)に感じます。

悪をなしうるのは当人自身だけというのは何となく分かりにくい表現ですが、故意がなければ悪を為し得ないということでしょうか。
人間のみが悪を為しうるのであれば、責任をもって理性を発揮し、社会的に生きることが人間のあるべき姿と考えられそうです。
しかし、現実には故意によらない悲劇は起こり得るものですし、それを運命として受け入れることだけが善い事なのかは考えていかないといけませんね。

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