『文読む月日』-5月9日

文学

徳は絶えず前進し、しかも絶えず新たに出発する。(カント)

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

トルストイの思想を見るに、徳は信仰の生活、善などとほとんど同じ使われ方をしているように感じます。
特に信仰的な内容であれば善、良心、信仰の実践などと言われますね。
特に道徳的な内容であれば徳、良心、賢者の智慧などが使われるように思います。

それを踏まえて、信仰は時代とともに進化していくということを主張しています。
古い信仰を盲目的に信じることは、子供の頃に読んでもらった寓話を大人になっても信じるようなものだ、というように喩えていることもありました。
カントの箴言では徳というように表現していますが、信仰と近いものとして、自分の主張を補強する考えとして採用したのでしょう。

新たに出発する、という表現は古い徳を時には切り捨てて新しい価値観に生まれ変わるものだ、とも読み取れます。
人間は度々迷妄や利己主義によって徳や信仰を曲げてしまうということが言われています。
そうあっても、しかるべき時にしかるべき努力によって正しい道に戻る力があるとい風にうポジティブに捉えたいですね。

ネガティブな捉え方をするのであれば、これまで積み上げてきた道はすべてハリボテで、人生を全く否定しなければいけないようなこともあるかもしれないということです。
何が正しい道なのかを常に考えないといけませんね。

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