『文読む月日』-5月30日

文学

土地を買ったり、売ったり、登記したり、管理したりすることは、大きな罪と言わねばならない。

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

土地の問題意識は当時のロシアにあっては大きなものだったようですね。
土地に縛られた経済に加え、農奴解放令の混乱もあり、農民だけではなく経済に疎かった貴族にも大きなダメージを与えました。

トルストイの小説にも、先祖代々の自らの土地を二束三文で商人に売ってしまう貴族や、自分のものではない土地を極めて安い賃金で耕す小作人など、当時の問題意識がよく表れていました。

土地は、自然のもので誰も所有権を主張することはできないというのがトルストイの考えです。
耕す労働によって得られたものが自分のものだと言えるのであって、不在地主などではないという反発意識ですね。
土地は神の者、労働は人間のものということで、それを誰かがここからここは自分のものだ、というだけで金をもらう権利があると思うのが諸悪の根源だという考えです。

実際に考えると、もろもろ共有しながら共同体を運営していくのはまあまあありえそうです。
半農の狩猟採集民などはほとんどそうだったのではないでしょうか。
経済活動や衣食住に関してはその生活を適用したとしても、今にあっては、プライバシーが気になりますね。
自分の体も自分だけのものだという意識も薄れそうです。
プライバシーは個人主義を強めると思います。トルストイのような共同体、例えば無政府主義が衣食住や経済の面でもうまくやっていけたとしても、個人としては息苦しいものになってしまうかもしれませんね。

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