『文読む月日』-5月14日

文学

霊の神性を意識すれば、人生のあらゆる災難も恐ろしくなくなる。

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

人生の災難というのは物質的な世界の災難ということなので大したことないと思えるという話ですね。
こう考えられるのも、世界を霊と物質の二元論で考えていることに加えて物質的な物についてはほとんど価値を認めていないからです。
価値を認めないのは、その思想・信仰からですね。
この手の信仰は、霊の成長(善の実践)をこの世で最重要のことと考えているので肉体的な不幸や逆境はむしろ霊の伸びしろと捉えてチャレンジすべきという哲学を持っているわけです。

霊の神性というのは、霊は神から分離し肉体に宿った形で人間に存在すると考えていることに繋がります。
キリスト教でも理性というものを特別視していますので、物事を考えて理解したり創造したりする力に加え、慈愛の心も理性が司っていると考えていたようです。
このようなことは人間を特別にしているし、理性は霊の性質と考えていましたので信仰からしても人間と他の生き物を区別して考える文化があったということだと思います。

神の完全性がある上で、神から分離した一部を霊(理性、精神)として宿している人間です。
物質世界なんて取るに足らないと見下して霊の世界に救いを求めれば万事OKということですね。

この手の理屈はいつも現世利益、特に生命の安全を軽視することに反論できない、もしくはする必要がないという考えに至ってしまうのでいつまでたっても腑に落ちない話です。

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