『文読む月日』-4月30日

文学

人生の真の目的は、無限の生を知ることにある。

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

トルストイの言う生は、肉体の生ではないことが殆どです。
肉体と精神(霊)の二元論で語っていることが多いですので、ここでの生は精神(霊)の無限性ということですね。

霊は神の一部から肉体に与えられたものという考えがあります。
神は永遠ですし、その一部の霊も永遠です。肉体が死んだときには神に戻って永遠の生を得るというような話もたまに出てきます。

ただ、そんなことを言われても信じられませんね。
精神は肉体によって生じている物理現象という認識ですし、肉体が生命活動を終えれば精神は終わりでしょう。
すくなくとも、肉体が死んでから生きている人間に精神活動を客観的に働きかけることができた事例はありません。

この箴言はそんなことを言いたいのではないことは分かっていますが、前提部分の文化的・時代的土壌が違うと素直に入ってきませんよね。

我々が受け取れるメッセージとしては、物質的なことだけが人生の目的ではなく、むしろ精神的な充足(それは信仰によって得られる)こそが人生の真の目的であり、その結果心に永遠性を持つことになるというようなことと思います。
肉体的快楽、金や栄誉、権力などは肉体が滅びればなかったことと同じです。
自己犠牲や無償の愛など、信仰に基づく行為はほとんどが社会互恵的な行為であり、その利益は社会(他者)に記録されたり、何らかの形で影響が残っていくことから、社会を存続させる限りは永遠といってもいいのかもしれません。
肉体的快楽は言わずもがな、金や栄誉、権力は自身に向いているときに価値のあるものですから、死後の影響は精神的な物より薄いものになりそうです。
これも、精神的活動の方が立派だ、という集合意識があるからかもしれませんが、人間がそのようになっているのだから真理とも言えるかもしれません。

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