誰もいないところでひとり祈るのはいいことだし、大事なことでもあるが、君が娑婆の喧騒のただなかにあって、昂奮したり熱狂したり苛立ったりしているときに祈るのは、何よりも大事なことである。そのようなときに自分の霊を思い神を思うこと―――それこそ一番大事な一番いい祈りである。
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳
肉体的な生活の中でこそ精神的な生活を思い出すことが大事だと言っているようです。
肉体的な欲求を満たすことは信仰の道とは外れることが多いですから。
それは、良心(自己満足実現のために他者へかかる迷惑を防止する社会的背景があると思われますが)が理性を基に築かれているという前提があるからで、理性は神の一部、つまり霊が宿っているから貴いというのが理屈だと思っています。
実際のところは社会互恵性の性質で生き残ってきた本能が正体なんだと推察しているのですが、祈りという行為によって互恵性を高めることができるというのは生き物の知恵という感じがして面白いと思います。
人間が素朴に心を見つめた結果、神や霊や祈りという概念を作り、深い洞察を発揮し理屈を発展させてきたと考えるとロマンですね。
まさに理性は感情を監査するのではなく、感情を強固に補強するものであるという研究結果の表れのように思いますし、神秘というのは感情を理論補強していくにつれて出来上がった複雑怪奇な建造物のような感じがして思いを馳せるのに楽しい題材ですね。
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