子供と子供が出会うとき、彼らは喜びに満ちた笑顔をもって好意を示しあうが、変質堕落させられていない大人の場合も同じである。それなのに、ある国家の一員となると、まだ見たことさえない異国人を憎悪し、彼に苦しみと死を与えようと身構えるのである。人々のなかにそうした憎悪感を醸成し、そうした残虐行為に駆り立てる人々の罪は、いかに重いことであろう!
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳
反戦のテーマは度々出てきます。実際にトルストイがクリミア戦争に従軍した経験が反戦思想に大きく影響しているそうです。
クリミア戦争ではロシアは負けていますから、色んな意味でショッキングな経験だったのだと思います。
ここでは、国家は戦争をさせるためには国民に「変質」を施すことがあると書いていますね。
具体的な変質の内容には、愛国心の利用や歪曲させた解釈の宗教が出てきていましたね。
不凍港の獲得や過去領土の復権など色々な動機で戦争を仕掛けてきたロシアですが、クリミア戦争のときの名目は外国にいるギリシア正教徒の保護だったそうです。
異教徒から同宗教の同国人を守ると意気込んで戦争に行った人はどれだけいるのか知りませんが、それで戦争に参加した人は国家に唆されてしまったようなものですよね。
大人になる、とか社会が分かる、とかいう言葉でこうした変質を受け入れるのではなく、自分が正しいと思う態度をとれるようになりたいものです。
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