『文読む月日』-2月1日

文学

人間は、自分の体も自分の精神も自分だと考えている。しかしながら人間はいつも、そして若いころなど特に、肉体のことだけに気を配る。ところが人間にとって一番大事なものは、実は肉体ではなくて精神なのだ。それゆえわれわれが最も配慮しなければならないのは、肉体のことではなく、精神のことでなければならない。そうした考え方に慣れ、汝の生命が精神のなかにあることをしばしば思い起して、それをこの世のいっさいの汚れから遠去け、肉体が精神を圧倒しないように留意し、むしろ肉体をして精神に服従せしめるがよい。しからば汝は汝の使命を果たし、喜悦に満ちた人生を送ることができるであろう。(マルクス・アウレリウスによる)

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

人間の本質は肉体ではなく精神にあるという考えが前面に出ていますね。
マルクス・アウレリウスは古代ローマ皇帝で5賢帝に数えられる哲人皇帝です。
ストア派哲学の哲学者ということで、トルストイにも影響を与えているようです。

『自省録』では何度も「人間の本質は肉体ではなく理性(ロゴス)にある」と説かれています。
ストア派哲学では 「情念(パトス)」に流されることを拒絶し、冷静に理性的に生きること を理想としますから、理性に自分の主導権を握らせようという考えは親和性がありますね。

この世には汚れたことが多いから精神を汚さないように気をつけなさいというのもトルストイの世界観と共通しています。
肉体と精神、古代ローマから変わらない二元論ですが、現代の科学がどれほど食い込んでいけるか気になっています。

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