『文読む月日』-12月7日

文学

死は、われらの霊がそこに宿る形の変化である。形と、その形のなかに宿るものとを混同してはいけない。

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

死に関するテーマの日です。

トルストイは、人間は肉体と霊の二元論の存在として捉えているように思います。

現代の知識からみたらこの捉え方には色々突っ込みどころがあると思うのですが(今この二元論を否定しているのではありません)、トルストイの著作を読んでいると人間の行動を導く意思について合理的な選択をする理性と信仰に応え得る選択をする善性が霊という言葉に込められているように感じてきました。

実際のところ、この世にあって行動を起こすのは肉体ですから、この世の肉体を維持する欲求を満たすことが人間には求められているわけです。
しかし、その欲求に従っていては霊的な向上はありえないというのがこの思想だと思います。

肉体的欲求の中には食欲、性欲、功名心、名誉欲などが、
霊的欲求の中には果実食主義、道徳的な生活、隣人愛、仙人思想(トルストイの話の中ではよくホームレスの汚いおじいさんがキリスト教原理に適う生活を実践し、周りの都会人をピシャリと言いたしなめることがある)などが取り扱われていたように思います。

そんな思想の上で死については霊性の変化に過ぎないということを多く書いています。
イメージ的には、霊はもともと大きな集合であったが、その一部がいっとき肉体という器に入っているのが人間だから、元あった場所に帰るのだ、という理解をしています。

多くの宗教思想にある、不滅の思想だと思います。死は怖くない。霊的には不滅だから死を受け入れよう。という励ましに加え、霊として帰る時は霊的に向上した状態になろうというプロパガンダ的な側面も期待できる思想だと思います。

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