『文読む月日』-12月6日

文学

われわれが迷妄に陥るのは、正しく思索できないからではなく、間違った暮らしをしているからである。

飢えたる者に食わせ、裸なるものに着せ、病めるものを訪れること――それはみな善いことであるが、それと比べものにならぬくらい善いことは――迷妄に陥っている人をそれから救いだしてやることである。

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

善い考えも、善い心を持っていてさえも生活のうえで実践がなければ意味がないという厳しい考えを持っていたように思います。
自他ともに対して厳しいこの思想は、トルストイ自身が若いころに放埓な生活をしていた反動でしょうか。

本日の箴言は『アンナ・カレーニナ』や『復活』でスピリチュアルな趣味に傾倒する貴族やスピリチュアルな民間信仰に頼る百姓が出てきたことを思い出させます。
それらの描写の中には大抵の場合、貴族的な暮らし(間違った暮らし)や自然科学に対する見識不足(理性による知識)を表現していることがあったなあと。

一方、無知は悪を生まないという内容も書かれていますから、誤った知識、生活上不必要な見識が驕りや堕落を生むという考えのようです。

迷妄に陥った人々に必要なのは正しい知識である。そして救うには実際の生活を正す必要がある。というような内容だと感じました。

上記小説の中の登場人物であるリョービンやネフリュードフの生活の根底によく表現されている、トルストイが強く信じている思想の1つだと思います。

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