もともと人間の性は直である。この本来の直が生活しているうちに失われると、その人はけっして幸福ではありえない。(中国の金言)
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳
この箴言の出典は分かりませんが、近しいのは孟子の性善説でしょうか。
人は生まれながらにして善であるが、環境や教育の影響でその善性が失われることがあるというような考えがあります。
そして、その善性がなくなるとその人にとっての幸福はありえないということも言っていますね。
直というのが何なのか気になりますね。
中国語でもまっすぐとか直線とかいうイメージのようですが、同じように素直とかいうニュアンスでしょうか。
トルストイの思想としては人間の性(本質)は精神や理性であり、すなわち霊性です。
霊は良心や善と考えていますし、もっと言うと神の一部です。
これと「直」を結びつけて考えていると思います。
細かく言うと、良心や善の一部分に直という性質を持っている、ということですかね。
素直で、善良で、まっすぐな心持であることが人間の本質であると考えているということですね。
これが外部環境、つまり日々の生活の中での人間関係や境遇などでひねくれてしまうことがあると。
そうすると人生幸福には生きられませんよ、とまで言っています。
実際には環境に加えて、その時々のホルモンバランスや生まれ持った性質というのもあるみたいですから、もう少し複雑です。
箴言、俚諺ですからおどし文句的に幸福ではありえないと入っていますが、しかし、道徳目標として素直でいることを掲げるのはいいことだと思います。
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