また悪、大いにはびこるによりて、多くの者の愛冷えん。(「マタイ伝」第二十四章十二節)
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳
イエスの終末論の一説が取り上げられていました。
今日のテーマとしては宗教は戦争に利用されることがあるというような内容でした。
その中でこの一説が取り上げられているわけですが、悪の増大が人々の愛を冷まさせる=人々から信仰が無くなる。敵対や離別が起こり戦争が起きる、というような文脈でした。
現代ではやはり信仰は衰退していると思いますから、それで近所付き合いが疎遠になったり、顔も知らない相手を大きい主語で想像しながら敵対するようなふるまいをすることを批判できそうですね。
ただ、近所付き合いが無いことが敵対を生んでいるとは思いませんし、むしろほどよい距離感で緩いつながりを感じる程度で心地よいと思いますから、悪のはびこりにはつながらないと思います。
顔も知らない相手を批判することは主にインターネットで盛んですが、これもより洗練された社会へ向かう過程の産みの苦しみのような気がしています。
信仰でこれを予防することはむしろ臭いものに蓋で中身が発酵する一方になりそうです。
対応施策を極端にすると揺り戻しが大きいですから、信仰を理由に激しく矯正するのではなく緩やかに生きやすい社会にしていくことだと思います。
イエスがこれを言った背景は正確には分かっていないと思いますが、やはり弱者を結束させるための説教だったのではと思います。
悪に勝つには愛=結束が必要。悪を排除しよう。というスローガンにも聞こえます。
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