芸術は人々を合一せしめる手段の一つである。
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳
トルストイの作品の中では、芸術についても何度か言及されますね。
特に信仰とのつながりを示唆するようなことが多いです。
特に芸術の効用として、作者の感情を鑑賞者にも与えるということに言及しています。
芸術の価値はまさにそこだと言わんばかりで、今日の箴言としては人々を合一せしめる手段と言っていますね。
信仰が神や愛、つまり神の被造物同士の合一や融和を目指すように考えていますので、祈りや信仰の実践と同じくらい芸術というのは影響力の大きいものだと考えているのでしょうね。
特にキリスト教は宗教画から教会音楽から色々な芸術を取り込んで発展させてきましたから、取り扱い実績の豊富な宗教と言えます。
しかし、カトリックにはじめ豪華絢爛な教会や荘厳なオルガンなど豪奢なことは批判しています。
芸術家にはパトロンがついて初めて生活ができるようになるというように、富や権力と一蓮托生な部分がありますから、芸術自体は素晴らしくても社会背景的には信仰の敵だったりすることもあるわけです。(トルストイも小説は素晴らしくても彼は貴族で搾取側です)
作品に罪はないと考え文化財として享受するのか、豪奢な趣味だと忌避するのか、すでに合一が難しそうな気がします。
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