『文読む月日』-1月29日

文学

人間の価値は、その所有する真理によって計られず、その真理を獲得するためにその人が注いだ心血の度合いによって計られる。(レッシング)

『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳

レッシングは18世紀ドイツの啓蒙主義者で、キリスト教や封建的思想の批判と、理性の啓発を進めた思想家だそうです。

よく出てくる実践主義に加え、ここでは過程が大事だというメッセージが見えます。
過程を大事にするということは、真理がすべての人にとって価値が同じであることを意味しているとも言えます。
獲得してしまったら持っている価値は同じなので、それまでにかけた苦労に価値を見出しているように思います。

現代のビジネスでは特に経過よりも結果が重視されますので、大人こそこの考えにはおや?と思うでしょう。
これは、当時の封建的思想から脱却していくうえで効果的な考え方だったのだと思います。

レッシングは教会の教えをただ受け入れるのではなく、自分の理性で検証し、鵜呑みにすることを否定しました。
妄信するのではなく、真理を求め続けて考え続けることが大事だと考えたのです。

ビジネス的に言えば、素直に信じていくことは楽ですが迷妄に陥ったり、正しく真理であっても真理以上の価値は生み出しません。
個人の努力で獲得するまでの過程は誰とも共有できませんし、独自の価値になります。
共有できる真理は常に一定の価値ですが、個人の経験は独自の価値を持ちます。

少し話が脱線しましたが、人間力という言葉が流行っている今見直したい教えでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました