単に道徳的生活のみを求めず、道徳を超えるものを追求せよ。(ソロー)
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳
今日のテーマは難しいのですが、おおざっぱに言うと、人と神の関係において人はどう生きるべきか?という問いが見られると思います。
上記の箴言について言うと、ソローは道徳規範に従うだけが善い人生を生きる条件には不十分であると考えているようです。
このソローという人は19世紀のアメリカ人で、超絶主義というアメリカ・ロマン主義思想を持った詩人とのこと。
超絶主義とは、
・人間の内面の神聖さや、神、自然との交流、個人の無限の可能性など、人間の明るい側面を主張する
・客観的な観測よりも個人の「超絶」した直感による真理の獲得を重視する
・既成の思想体系に挑戦し、個人の自発性、自己信頼、因襲への反抗を重視する
つまり、キリスト教ベースで、人間の霊的直観を信じ、自立した個人を主題とする主義のようです。
そして、トルストイがこの考えを取り上げたというところに注目したいと思います。
トルストイ自身は超絶主義を掲げていたわけではありませんが、ソローの箴言を取り上げる程度には影響を受けていたようです。
既成の思想体系から脱却し、自立した個人の内面にある霊を通じて真理を獲得しようという思想はよく馴染む思想だと思います。
個人の内面を重視した世界との関わり方、国や権威への反骨精神は当時醸成され始めた道徳観なんだと思います。
話が変わりますが、トルストイ初期の頃の作品『戦争と平和』では上流階級の言葉はフランス語でしたが、晩年の『復活』になると英語がよく話されていました。
思想の潮流もフランス語/ヨーロッパから英語/英米に移ってきているのかな?と考えるとおもしろいですね。
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