人々は愛によって生きる。自己愛は――死のはじまりであり、神と人々への愛は――生のはじまりである。
『文読む月日』ちくま文庫 レフ・トルストイ 作 北御門二郎 訳
愛というのは言う人や文脈によって様々な使われ方をしますが、トルストイの作品の中ではおおむね人びとを結合、共感、調和させる行為や気持ちというイメージで使われていると思います。
そしてこのテーマでは自己愛と隣人愛の2つに愛を分けていますね。
「自己愛は死のはじまり」には、仏教でいう執着の観念に通ずるような思想が見て取れると思います。
もう一方の「生のはじまり」ですが、他者とつながることは、自分の殻を超えたところにある人生の意味や喜びを見いだすことができるようになるという考えだと思います。
人は他の人々と繋がることで人生を善く生きることができるという思想が暗に示されているように思います。
なお、隣人愛と言いましたが、神への愛も他人への愛も神性の愛、つまりキリスト教でいう隣人愛ですので「神と人々への愛」はキリスト教の隣人愛の観念であると言えるでしょう。
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